今、高卒採用が見直されている
2023年厚生労働省の発表によると、高校生の求人倍率は3.52倍と統計を開始した1985年以降、過去最高でした。要因として、将来の生産年齢人口の減少の上に、コロナ禍からの経済活動の再開により各企業が求人を増やしていることから、若手人材の確保が難しいと考える企業が多くあり、「高卒の採用」に注目が集まっていると言えます。
高卒採用のメリット
内定辞退率の低さ
2023年卒では大卒の内定辞退率はなんと約65.8%にもなりました。
大卒採用のように複数の企業の面接を同時に受けることができないことや、基本的に内定をもらった企業に就職することなど、高校生の就職活動にはルールがあるため内定辞退はほぼ起きません。
採用コストを抑えることができる
「1人1社制」が大きな要因として機能しており、内定者の採用辞退対策をする必要がないことから、大幅な採用コストを削減することができます。
また、求人募集を学校側に出すには「ハローワーク」を通じて行う必要があります。
これによって複数の媒体に広告を出す必要がなく、採用コストを削減することができます。
採用計画が立てやすくなる
1名の新卒を確保するため多大な労力が必要となる大卒と比較すると、高卒採用の場合は採用目標人数に対して何名に内定を出すべきか、判断しやすいのが特徴と言えるでしょう。
(原則)併願受験がなく志望度が高い
たくさんの企業を受けることができない理由に「一人一社制」というルールがあります。
応募解禁日から一定時期の間まで、一人の生徒が応募できる企業を一社とする制度で、高校生の勉学がおろそかにならないように設けられています。
1社ずつ応募するため、志望度は他の採用経路と比較すると高いと言えるでしょう。
自社以外に他の会社の面接をたくさん受けていて、「内定を出しても入社してくれるか不安」と感じることはありません。
採用業務がおよそ1/4に短縮
大卒採用の場合、大学生は複数エントリーが前提とした就職活動を行うため、企業は多くの人材と接して採用活動を進めなければ思うような採用成果を獲得できません。
一方、高卒採用の場合、高校生は就職活動の中で検討する企業数が少なく、内定辞退がほぼないため、企業側も選考を行う人材数が少なくて済み、採用業務はおよそ4分の1と大幅に短縮できるのがメリットの1つです。
面接のすっぽかしがない
人事の皆さんは、「面接の時間になっても候補者が現れず、がっかり。」という経験が少なからずあるのではないでしょうか。
高校生の就職活動は、学校 の先生と二人三脚で行うため、大学生や中途採用のように説明会や面接をすっぽかす生徒がいません。
自分が受けたい企業を1社に絞って全力で面接を受けに来ますし、学校の先生のフォローもあるため、「大切な時間をすっぽかされた」と思うこともほとんどありません。
学校の先生が採用業務の一部を担ってくれる
ルールの一つとして、高校生の採用活動では、企業側が候補者の生徒とやりとりを行うことは基本的にありません。
学校の先生が間に入り、先生が生徒とのやり取りを行ってくれます。
説明会の集客、呼び込み、説明会後のフォローを一人ひとりに行うのではなく、一括して先生に依頼を行います。
先生方との関係を強化することで、しっかりとしたフォローをしてもらえるようになるでしょう。
長期の戦力化
高校生の新卒は、大学生の新卒より4年先に社会に出るため、大卒が企業に入社するころには社会人5年目になっています。
4年間の実務経験年数は大きなスキルの差となり、若くして部下を持つなどの責任のある仕事を任せることができれば、20代での活躍の時間が最大化。
若手の長期戦力化が可能となり、企業の活性化につながります。
高卒ならではの魅力を持つ人財が得られる
【素直さ】
高校生の採用を継続的に行っている企業からよく聞かれる声で多いのはこの「素直さ」です。
企業に就職してすぐは、学校の延長線上。「言われたことを確実にやる」というスタンスで真面目に仕事に取り組んでくれますので、丁寧にわかりやすく教えることで活躍してくれるでしょう。
仕事に慣れてきたら自分の考えを発信したり、若手ならではのアイデアを出したりして会社に貢献する高卒社員もいます。会社の年齢層が高く、若い意見を取り入れたいからと高卒を始めた企業も実際にあります。そして、何より素直であるからこそ「企業風土・文化」の浸透がしやすく会社の基盤が整います。
【若さ】
高卒で採用し育て続けると若いうちから即戦力として活躍できる機会が増えます。当然のことながら大学新卒と比較して、同年齢で4年の経験差が出ます。この4年の差はとても大きく、大学新卒が入社する頃には彼らの指導役として活躍してくれるでしょう。若い時期の吸収力の高さは目を見張るものがあります。
その若さをもって会社で活躍してくれることは企業にとって貴重な財産になるでしょう。
人手不足解決
高校生の新卒採用は、他チャネルと比較しても圧倒的に「ブルーオーシャン」の採用マーケット。
年々参入企業が増えてきているからこそ、早めに動き始めることが重要です。
他社との差をつける採用活動を行い、長期的な活躍を担える若手人材の確保を進めましょう。
既存社員の意識向上
高校生の新卒社員が入社するメリットの1つとして、既存社員の意識向上が挙げられます。
特に高卒社員を採用した場合、既存社員の“教育に対する意識”が強まり、目線が1段階上がります。
社風改善
高卒社員の魅力の1つは、10代という圧倒的な“フレッシュさ”。
若くて素直な人材を採用することにより、社風改善が図れ、経営基盤の強化にもつながります。
社内ピラミッド改善
若手人材の確保が難航し、社内平均年齢の高齢化が進んでいませんか?
高校生の新卒採用を継続して行っていくことで、若手の基盤が固まり、社内ピラミッドの改善にもつながります。
若手育成に力を入れる会社になれる
高卒採用する場合、10代で入社するため、育成する側の緊張感が芽生えるという事例はどの企業にもあるようです。
やはり、教える側も「社会人としてしっかりと育成教育したい」という気持ちが強くなり、「若手育成に力を入れる会社に変化した!」という嬉しい事例が多数存在しています。
若手育成に取り組む会社としてブランドが定着すれば、高卒採用に限らず大卒や中途採用においても好印象に捉えられ、高卒以外の他の採用経路においても良い採用実績を積むことができますし、社員の定着にもつながるでしょう。
高卒採用のデメリット
大卒と比べると入社後のミスマッチが起きやすく、離職率が高い
「1人1社制」が大きく関係しており、高卒者は少ない選択肢の中で就職先を選ばなければなりません。
そのため、多くの選択肢から就職先を選べる大卒者と比べると、どうしても入社してからのミスマッチが起きやすく、それに伴い離職率も高いです。
面接内容や期間に関して大卒採用よりも多くの制限があるため、学生との接点が作りにくい
高卒採用のスケジュールは大卒採用のスケジュールと比べると短く、面接内容などに関しても多くの制限があるため、学生との接点を作っておくことが難しくなっています。
高卒採用の特徴を知りたい!
ここでは、高卒採用のスケジュールと取り入れる際のポイント、注意事項の観点から見ていきます。
高卒採用のスケジュール
厚生労働省「令和6年3月新規高等学校卒業者の就職に係る採用選考期日等を取りまとめ」
- ハローワークによる求人申込書の受付開始 ・・・・・・・・ 6月1日
※高校生を対象とした求人については、ハローワークにおいて求人の内容を確認したのち、学校に求人が提出されることとなります。 - 企業による学校への求人申込及び学校訪問開始 ・・・・・・・・ 7月1日
- 学校から企業への生徒の応募書類提出開始 ・・・・・・・・ 9月5日
(沖縄県は8月30日) - 企業による選考開始及び採用内定開始 ・・・・・・・・ 9月16日
では、高卒採用を取り入れるために企業側は具体的にどういったことをしなければいけないのか、次のポイントで確認していきましょう。
高卒採用を取り入れる際の必須ポイント
6月になると、ハローワークによる求人申込書の受付が開始されます。高卒採用をするにはまず、ハローワークを経由して学校に求人を出す必要があるため、
高卒採用を希望する企業はハローワークに求人申込書を提出しなければなりません。提出された求人申込書はハローワークの確認が行われた後、7月に学校へ公開されます。
また、同時に学校訪問が解禁されるため、企業の人事は学校の進路担当者のもとへ訪問することができるようになります。
9月になると、学校から企業への生徒の応募書類が提出開始になり、9月16日には企業による選考と採用内定が開始されます。
また、「1人1社制」により、生徒は内定をもらった企業に就職しなければならないため、内定をもらった時点で就職活動は終了となります。
高卒採用をするにあたって
「1人1社制」について
「1人1社制」は生徒が1度に1社しか応募できない仕組みであり、同時に複数応募することはできません。しかし、現在は地域ごとの高等学校就職問題検討会が開催され、地域ごとに1人1社制についての申し合わせが決定されているため注意が必要です。
ハローワークを経由して学校に求人を出す必要がある
高卒採用を希望する企業はハローワークに求人申込書を提出しなければなりません。
また、生徒は「全国高等学校統一応募書類」を用いることとされているため、企業側は独自の応募書類を学校や生徒に送ることができません。
長期的に活躍できる人材を獲得しましょう
「人手不足」が叫ばれる昨今、企業は大学新卒人材の取り合いをしている状況です。このような中で、優秀な人材の原石ともいえる、活力と素直さを持った高校新卒者を育て上げることで、長期的に活躍できる人材を獲得することができます。